護られなかった者たちへ―電子書籍
概要
中山七里さんによるミステリー小説です。同小説を原作とした映画もつくられています
あらすじ
周囲からは恨みを買うような人物ではないという者が殺害されます。犯人はなぜ、殺人という犯罪を犯してしまわなければならなかったのか?その動機解明と、事件解決に向けて奔走します。
感想
事件を追っていく過程で、生活保護や貧困といった現代の厳しい現実も垣間見れ、考えさせられるストーリーだと感じました。とくに老後、働きたくても働けない、雇ってくれるところがないため生活に困窮してしまうといった実態は、やがて自分たちにも起こりうることなのだと漠然とながら感じてしまいます。会社や雇う側からすれば、当然若者のほうが望ましいのは理解できますが、年老いて収入源がないという現実も確かに存在するでしょう。そんな現実がやってくるのかもという不安や恐怖も感じてしまいます。
ただ、被害者に対しての個人的な見解ですが、
- ほんとうに彼らは殺されなければならないような大悪党だったのか?
- 彼らはただ、実直に仕事を遂行していただけではないのか?
- 彼らも、上層部などと板挟みになって悩んでいたのではないのか?
といった疑問も持ってしまいました。もちろん犯人側からすれば、許しがたい恨みがあったので殺人を犯してしまったというのは理解できます。しかし、被害者側の内面や葛藤といったものには、あまり触れられていなかったように感じました。もしかしたら彼らもある意味「護られなかった者たち」だったのでは、そんな風にも感じてしまいました。

護られなかった者たちへ(電子書籍)
著者 中山七里
出版社 NHK出版