石の繭 警視庁殺人分析班―電子書籍
概要
麻見和史さんによる警察署小説です。警視庁殺人分析班シリーズ第1作目です。
あらすじ
モルタルで固められた変死体が発見され、所轄の愛宕署に特別捜査本部が設置される。捜査会議が始まった矢先のこと、なんと、本部あてに自らが犯人だと名乗る電話がかかってきた。その交渉相手に選ばれたのは新人刑事、如月塔子。事件を巡り、塔子が所属する警視庁捜査一課十一係、通称殺人分析班が犯人と対峙します。
感想
過去の悲惨な出来事への復讐を生きがいとしてきた犯人の信念と決意には驚かされるばかりです。犯罪を犯すことは決して許されることではありません。それを承知の上で、犯人が実際に計画し実行してしまうのは、復讐に燃える執念以外の何ものでもないでしょう。
自分自身では、どうあがいても変えることができない過去。もしそれが悲惨なもので、さらに誰かの企みによって引き起こされたものだとしたら、その誰かに対して憎しみが生まれてしまうのは当然のことでしょう。その憎しみがいつまでも自分の心のなかでくすぶり、決着をつけなければ自分自身で納得がいかない、憎しみが消えないという気持ちになってしまうこともあり得るでしょう。とくに自分だけでなく、大切な人もそれにより失ってしまったのなら、復讐という感情が湧いてきても不思議ではないと思えます。復讐のためだけに生きているという気持ちにもなってしまうことでしょう。
悪の道に踏み外してしまうことを肯定することはできません。しかし、誰しも持っているであろう憎悪や恨みといった感情を、自分自身どう消化していってよいのかということを考えさせられるストーリーであると感じました。

石の繭 警視庁殺人分析班(電子書籍)
シリーズ名 警視庁殺人分析班
著者 麻見和史
レーベル 講談社文庫
出版社 講談社