石の繭 警視庁殺人分析班―WOWOWドラマ
概要
麻見和史さんによる同名小説が原作の、全5話WOWOWオリジナルドラマです。
【主なキャスト】
・如月塔子 :木村文乃
・鷹野秀昭 :青木崇高
・神谷太一 :段田安則
・早瀬康之 :渡辺いっけい
あらすじ
モルタルで固められた異様な変死体が発見されます。驚くべきことに、犯人は自ら捜査本部に電話をかけ、ときに挑発しながらも事件解決のヒントを与えてくるのです。その犯人との交渉役を担うのは、警視庁捜査一課十一係の新米刑事、如月塔子。警察と犯人の頭脳戦が繰り広げられます。
感想
木村文乃さん演じる如月塔子は、仕事に対する一生懸命さと新米刑事らしい不器用さみたいなものがしっかりと伝わってきて、小説のなかの如月塔子そのものといった感じがしました。青木崇高さん演じる鷹野主任も、小説を読んだときのイメージと違和感なく、背が高くひょろっとしている感がぴったりでした。他の捜査一課メンバーも同様で、小説の世界観を壊すことなく物語にすんなり入り込めたのは、やはりキャストの皆さんの演技力が素晴らしいからだと思います。
ドラマでは、事件を追う緊迫した展開はもちろん、塔子が刑事としての覚悟を持ち、成長していく姿も描かれています。一生懸命な新米刑事の塔子を、周りの捜査一課メンバーが一人前と認めていく過程や、チームとしてまとまっていく様には、嬉しさも感じます。警察が追い詰められていく模様も、文字で読む小説とはまた違った、映像ならではの緊迫感を感じました。やはり文章だけでは伝わりにくい登場人物の表情や空気感、そして複雑な心情といったものは映像ならではの魅力です。全体的に間延びすることもなく、全5話があっという間に感じられるほどテンポ良く視聴できました。
もちろん小説とは異なる部分もいくつかありましたが、それでも「ドラマ版・石の繭」としてきちんと独立した作品として成立していて、見終わったあともしっかりした満足感が残りました。
ドラマの中で鷹野との関係に悩む塔子に、神谷課長が「あいつはお前に同情しない。同情ではお前を救えないと知っているから」と語る場面があります。これは事件を起こしてしまった犯人にも言えることだと感じました。犯人の過去を知ってしまうと「悲惨な過去さえなければこのような罪を犯すこともなく、平穏に暮らせていたのでは」という同情の念も湧いてきてしまいます。しかしだからといって犯した罪が許されるわけではない、という葛藤も感じました。
原作小説はこちらで紹介しています。よろしければ、あわせてお読みください。