私が大好きな小説家を殺すまで
殺人事件が起こりその謎を解き明かしていくのではなく、誰かに依存してしまった人間の末路、そのあり様が描かれています。
特別な才能を持つ者は、己の限界を悟ったり、完璧になれない自分を許せずに絶望したりと、凡人にはない悩みを抱えることがあるのでしょう。特に小説家など何かを生み出していく職業は、自分の命を削って作品を創作しているというのを見聞きしたことがあります。
人間として崩壊していくなかで、もがいても天才であるがゆえに立ち直れない。それを支えていく者が現れるのだが、お互いが依存しあってしまう。嫉妬や羨望といった誰もが持ち合わせている人間の感情の移り変わりが物語の中で進んでいきます。
主人公の梓が歩んできた道を考えると、もっと報われる人生であってほしかったと思わざるを得ません。 彼女なら、誰にも依存せずにひとりで生きていける力を持ち合わせているはずだからこそ、違う選択をしてほしかったという想いが読後も残っています。